Part One: 版下の準備

Enlarging the original
もともとは、絵師によって描かれた絵から作業が始められたのですが、この復刻の場合は、すでにある版画が元となって始まります。カラーコピーで重複を残しながら400%に拡大します。元となる版画が左側にあります。


Tracing the image

次に、一枚ずつ、ライトテーブル(光がガラスを通して下から紙が透けて見えるようになっている)の上に載せ、ペンと筆を使って、絵の線を薄い雁皮になぞっていきます。この時点ではまだ色のことは考えず、なぞっているのは「墨摺り」をする線だけです。筆の流れの味わいを、ていねいに再生していきます。


Tracing the lettering

私のように左利きの者にとって、右手で書かれた筆の線をなぞっていくのはなかなか難しいんです。やり直して継ぎはぎしているのが分かるでしょう? 満足のいくところまで全部写し終わると、つぎはぎのこの紙をもう一度コピー機にかけて50%縮小します。(ここではまだ、元の大きさの2倍です)そうなったものを全部集め、今度は「美濃紙」に直接50%縮小でコピーします。これが「版下」で、次にこれを版木の上にのり付けしていきます。


この版画に使おうとしているのは山桜の版木です。これはかなりきめが細かく固い木ですが、この版画にある細かな歌の文字を彫るためには、それでも充分でないのです。ですから、版木の表面の一部に黄楊を埋め込むことにしました。ノミで穴を彫り、そこにあてはまるような木片をひと組用意しまます。(黄楊の木はあまり太くならないので、一枚でぴったり納まるような大きさのものは手に入らないので、2枚の木片を埋め込んだのです)


準備ができたら、黄楊片を埋め込む位置にのり付けしますが、この時、のりの湿り気で反り上がってこないようにしっかり押し付けます。その後、乾いてか ら、版木の本体と同じ高さで平らになるように、鉋でとび出ている部分を削ります。


それから版木の表面にのりを薄く伸ばして、その上から版下を、表が下になるように置きます。黄楊を埋め込んだところに歌の文字がきているのが見るでしょう... 表面がむらになって見えるのは、付けたのりで紙がまだ湿っている間に、そおっと指の先でこすってそこの部分を剥がしたからです。


最初は、そんなことできっこないと思うでしょうが、紙の部分をほとんど取り除き、線だけを版木の表面に残すということは可能なのです。ただ、ほんのちょっと力を入れ過ぎても、ほんのちょっとこすり過ぎても、線は消えてしまいますが ....


... でも、丁度良い頃合いにこすると、絵がくっきりと見えて彫りに移ることができます。もしも白い紙のくずがあちこちに残っていたら、椿油をほんの少し木綿の布切れに含ませてつけてください、透明になります。

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