ミルトン

今月の作品に関して、お話したいことは山のようにあるので、この紙面では狭すぎます!御覧の通り、これは浮世絵の復刻ではありません。去年の今頃と同じように、現代作家の作品をお届けしました。ジョン・エィモス氏はアメリカのジョージア在住で、時折、ここに描かれている大きな製紙工場のある道を車で通ります。(ミルトンという町名は、英語の 'mill :製粉所' に由来しています)何年か前、彼はこの工場を題材にした版画を作ったことがあり、私はその作品を見てすぐに、「摺物アルバム」のために自分で作ってみたいと思いました。その後、彼から許可をもらって制作したのがこの版画です。私の作品は、単なる彼の複製ではなく、むしろ改作と言った方が良いでしょう。

制作は以下のような行程で進行、それこそ二人の協同作業でした。

この版画を皆さんにお届けするまでの行程は、かなりの冒険でした!

ところで、この作品はいかがですか?これは新版画形式の作品ですが、私が今までに見てきたどの作品とも違い、「綺麗」な物を描写した絵ではありません。雪の中、傘をさして歩く女性達... 夜明けの富士... 新版画を代表する題材は、一般にこういった情景です。でも私は、版画の美しさは、描写されている絵の題材自体だけではなく、その題材がどのように描写されるかという点にもあると考えるのです。ジョンも彼の描いた絵についてこう説明しています。「製紙工場なんて、臭いも外観も嫌悪感を催す。でも、ある特定の条件下で見れば、醜美となる」

確かに美しい!見て下さい、何度も摺り重ねられている色を奉書紙が吸収している様子を、豊かで深みのある質感を与えています;見てください、暗い周囲が明るい箇所を輝かせている情景を;見て下さい、建物を。濃い暗色で何層にも覆われているのに、ほのかな月明かりに光っています!

伝統木版画は、とても様々な表現力を持っているので、私の作品に使える技術など、可能性のほんの表層をひっかいた程度です。私は、敢えて「醜い」絵を探し出して作品にするようなことはしませんから、次回第4集の最後は、とても穏やかで「古典的」な絵になります。でも、これこそと思う作品に出会えば、たとえそれが標準的な型にしっくりあてはまらなくても、逃げ腰になど、ならないつもりです。

皆様が、以上の内容を御理解くださいますよう、そして、この作品をお楽しみ頂けますように!

平成15年1月

デービッド