版画玉手箱 #16


処暑過ぎて

外国への「冒険」が2回続いた後ですから、伝統的な雰囲気の漂う絵に戻りましょう!

この作品は、最初の頃にお送りしたある作品と同じようなところから見いだしました。その作品は「茶道具」と題した絵で、どちらも共に、手本集の中にあります。このような本には、花鳥画が圧倒的に多く、なかでも鳥と竹は定番で、こういった絵を勉強する人にとって必須の題材であったようです。私は、この絵にある竹の葉の風雨に打たれて幾分痛んでいる様子が、夏の終わりの気分に相応しいように思ったのですが...

今から5年ほど前、「摺物アルバム」の第1集を制作していた時、屏風に墨で画かれた竹を版画にしてみたことがあります。私にとってこれは、ちょっとした実験でもあり、収集家の方たちの反応がどうなることか心配でした。自分では、何かもの足りない感じがして面白味のない作品に思えたのです。ところがこれは、まるで杞憂にすぎませんでした。この年の作品集で、とても好まれた類に入ったからです。とすると、今回の作品も同じように喜んでいただけるのでしょうか!

初春から始めた「版画玉手箱」は、はっきりとした季節感のある作品と、そうでないものとが入り交じった内容になっています。でも残るはあと8作のみ、この8回に秋と冬の作品を詰め込まなくてはなりません!ですからみなさん、体勢を整えてください。ともすれば暑さを理由に怠惰になりがちな夏から新規一転して、1年で最高の季節にまっすぐ突入ですから。私は、お先に出発します!

今日から2週間ほど過ぎると、中秋の名月です。もう、お分かりですね。次に送られてくる包みを開くと、中から現れる作品は...。

David

平成17年9月5日